オタクリ!

腐女子でオタクなクリスチャンの生態系

スターウォーズが嫌いな人にこそ読んでほしい!スターウォーズと聖書(ローグワン感想と考察)

 

いやー今更ローグワン観たんだけどめっっっっちゃ良かった!

あれはスピンオフなんかじゃない、スターウォーズの正史だ。

スターウォーズファンの端くれとして、どうしてこんなにもスターウォーズしてる作品を放置していたんだろう!?

 

というわけで、今回はスターウォーズキリスト教的考察の皮を被った「ローグワンの販促」となっております。

ローグワンのラストはお話しませんが、全体的にスターウォーズの内容に触れまくっているので、真っさらな状態で映画を観たい方は閲覧をご遠慮ください。

でも「スターウォーズは一作だけ見たけど付いていけなかった」とか「よく分からなくて取っ付きにくそう」って人はちょっと見てってほしいかなぁ。

 

具体的には、スターウォーズが何故に面白いのかと、人によっては何故に面白くないと感じてしまうのかをクリスチャン的に考えていきたいと思います。

結論から言うと「みんなローグワン観ようぜ」なんだけど、まあとりあえず聞いてくれよ!

 

観たことある人は何となく分かってくれるかと思うけど、スターウォーズって限りなく聖書的な世界観を基にしてますよね。

 

闇が光を覆う世界で、預言された救世主を待ち望む世界。

目に見えぬ力が存在し、それが悪にも善にも転ずる世界。

 

キリスト教ではイエスが、スターウォーズではアナキン・スカイウォーカーが、ともに人の父親を持たずに大いなる存在によって処女から生まれた救世主です。

また、聖書的考え方では聖霊(と悪霊)が、スターウォーズではフォースが、目に見えぬ力として世界を動かしています。

「フォースと共にあらんことを」という、スターウォーズにおける反乱軍の合言葉は、「主が共におりますように」というキリスト教の祈りと同じ発想です。

 

決定的に異なるのは、人として世に降り、様々な苦難や誘惑に遭いながらも、完璧な救世主として使命を全うしたイエス・キリストに対し、スターウォーズにおける救世主であったはずのアナキン・スカイウォーカーは、道半ばで暗黒面(ダークサイド)に堕ち、ダースベイダーとして、さながら堕天使のように力を振るい、世界を恐怖に陥れます。

スターウォーズを見る度、「イエスってマジですごいな」って俗な発想ながら思うわけですが、それは置いておいても、スターウォーズはとても興味深いですよ。

 

未視聴の方はご存知ないと思いますが、スターウォーズシリーズは物語の時系列と公開順に差異があります。

 

エピソードの時系列

1~3⇒ローグワン⇒4~6⇒7~9

 

1~3、4~6、7~9がそれぞれ1セットで主人公が一緒。

各矢印にはタイムラグがあって、登場人物ががらっと変わります。

ざっくり言うと

(1~3)救世主の誕生と堕天

(ローグワン)世紀末

(4~6)人々の勝利

(7~9)堕天の清算?後述。

こんな感じ。

 

エピソード公開順

4~6⇒1~3⇒7⇒ローグワン⇒8(これから⇒9)

 

普通、エピソード公開順にならって、4~6を「旧三部作」、1~3を「新三部作」、7~9を「続三部作」と呼んだりします。

敢えてナンバリングとローグワンしか入れなかったけど、他のスピンオフとかアニメとか入れるともうわけわからんって画像がネタとして流行ったこともあったっけ…(遠い目)

 

この混沌には商業的な経緯があって、ルーカスがシリーズ構想をユニバーサルに断られて、辛うじてFOXで受け入れられ、

こりゃ何としても最初の三部作で成功しないと残りが続かない!

となったとき、1から公開しちゃうと2と3が暗すぎてちょっと先行き不安だったんですよね。

(ちなみに最初は6部作だったのか、最初から9部作だったのかは諸説あり。というか真相はルーカスのみぞ知る)

観た人は分かるけど、2と3って「この後には4〜6があるから(汗」って思わないととてもじゃないが観ててメンタルがもたない。

1から始めてたら、絶対にここまでヒットしていなかった。

というか下手したら2で終わってた。

監督報酬を抑えてまでシリーズの所有権を取ったこともそうだし、ルーカスは商売の才覚すごいよね。

あと1〜3の内容は当時の映像技術では物理的に実現不可能だったという話もあります。

そんな訳で、一話でも割ときちんと盛り上がるエピソード4で始まり、結果的に大ヒットしたのでした。

 

ちなみに、ディズニーによる改悪とも言われている後付け三部作ならぬ続三部作ですが、これも今のところ一応プロテスタントキリスト教史の流れには沿っています。

スターウォーズは、一部の選ばれた超人だけがフォースを操り人々を導いていた時代から、人種や性別に関わらず、フォースが万人と共にある時代へ。

キリスト教は、一部のエリートだけが聖書を読んで祭司として人々を導いていた時代から、万人に聖霊が降り、皆が聖書を読んで神と個人的な関係を持つことができる時代へ。

もちろん、それはイエスという橋渡し的存在がいたからこそなのですが。

 

で、その上でのローグワンですよ。

ローグワンもディズニーなんですが、いやごめん悪口じゃないんだけど正直ディズニーとは思えない内容だった。

 

新三部作と旧三部作の間は、ダースベイダー率いる帝国軍の支配が強まり世界が絶望に包まれる「暗黒時代」なのですが、
ローグワンは、割と勧善懲悪モノだったスターウォーズのグレーな部分を、この暗黒時代で描くというコンセプトのもと、エピソード4開始の10分前までの経緯を描いた意欲作です。

 

10分前ってどういうこと?ということで、シリーズ第一作であるエピソード4冒頭に流れるお馴染みのオープニングロールを振り返ってみましょう。

 

It is a period of civil war.
Rebel spaceships, striking from a hidden base, have won their first victory against the evil Galactic Empire.
During the battle, Rebel spies managed to steal secret plans to the Empire's ultimate weapon, the DEATH STAR, an armored space station with enough power to destroy an entire planet.
Pursued by the Empire's sinister agents, Princess Leia races home aboard her starship, custodian of the stolen plans that can save her people and restore freedom to the galaxy....

時は内乱の最中である。秘密基地を発った反乱軍の宇宙船団が、邪悪な銀河帝国軍に対して初の勝利を収めた。
この戦いで、反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を奪取することに成功する。それはデス・スターと呼ばれる、惑星をも完全に破壊できる力を持った巨大宇宙ステーションだった。
設計図を受け取ったレイア姫は、人々を救い、銀河系に平和を取り戻すべく、自船で故郷へと向かうが、帝国軍の密使に発見されてしまったのだった…

 

はい、ここで何度も見返して内容を覚えてしまったファンの皆さんに伺います!

これ初めて観たときの「えっえっどういうこと?いきなり出てきたデススターって何?てかレイア姫って誰?」って感覚覚えてますか?

基本的にスターウォーズって、どのエピソードもいわば起承転結の「起」が終わってる状態、「承」から始まってるんですよね。

起承転結全部描くととんでもない長さになるし、何より多分映画としてつまらないから。

目に見えて冒険活劇してるところだけ抜き出して、乗りと勢いで押し切る構成になっています。

だから「起」を全部文章で説明しようとするオープニングロールの情報量が多すぎて、初見だと「???」ってなるわけです。

スターウォーズが分からない」「ついていけない」っていう人が少なからずいる原因はここにあるんじゃないかなーと思います。

しかも4から見てるから尚更分からない。

 

でもね、スターウォーズお馴染みの壮大なメインテーマとともに流れるこのオープニングロール、何とローグワンには無いんですよ。

「ジャーン!ジャガジャーン!」っていうあのオープニングを期待したファンは裏切られたかたちになったけど、いやこれ一つの作品として完成されていることの証明ですよ。

だって説明が不要って素晴らしいじゃないですか。

 

だからエピソード4が分からなかった人は無理してセオリーに倣わずに、事前情報なしに観れるローグワンから入っても良いのではと思いました。

メンタルが持てばですけどね。

後は1から観るって選択肢もあるにはあるけど、前述のとおり2〜3がキツくなるから私はやはりローグワン→4〜6の順番がおすすめ。

 

そして私がローグワンを高く評価する理由の一つが、キリスト教的世界観と照らし合わせたときに、相違点である「救世主の堕天」「救いなき世紀末」に対して人間はどうするか?というチャレンジングな問いを投げかけている点です。

エピソード3と4の間、ローグワンが描いた暗黒時代はまさにそのような世紀末の様相でした。

 

この問いに対してローグワンが用意した答えは、ポスターにもはっきりと書いてある通り、「希望は死なない」でした。

アナキンという救世主を失ってもなお、スターウォーズの世界から希望、もっとピンポイントに言えばフォースが消えることはなかったのです。

まるで、昇天したイエス聖霊を遺していってくれた現代世界のように、救い主のいないスターウォーズの世界においても、一人一人に神が力を宿してくれている。

これこそが希望であり、信仰であり、時代を切り開く原動力となりました。

象徴的なキャラクターが盲目のフォース感応者、チアルート・イムウェです。

もはやフォースが眉唾になってしまった時代、イエスの奇跡のような目に見えるものとしてはフォースを信じられなくなってしまった時代。

ただスピリチュアルなものとして漠然とフォースを感じ、ジェダイですらない一般人のくせにジェダイ顔負けの力を振るう。

彼は映画こそ無敵の強さを誇る達観した仙人のように描かれますが、スピンオフ小説の「ウィルズの守護者」では、人並みに迷いや恐れを抱きながらも、言い聞かせるようにフォースに対する信仰を告白し、強靭な精神力でもってフォースの感応者であり続けていることが分かります。

 

ちなみに「ウィルズの守護者」は私と同類の方には是非読んでいただきたい一冊ですが、残念ながら邦訳がありません。

どうしても英語ができない私のような方はくだものさんがサイトbooks bananaで詳細な読書レポートを作ってくださっているので、そちらをご覧ください。

ウィルズの守護者

 

「ウィルズの守護者」中盤で、映画に出てきたソウ・ゲレラとチアルートの相棒のベイズが話す場面がありますが、そこでベイズがこんなことを言っています。

 

Most believed they had come because of the temple.
We thought, they have come to crush belief, because belief to hope, and hope can topple monsters.
They will stay long enough to crush hope, but they don't understand that hope can be a very small thing.
It doesn't need much to survive.
An occasional breath of air.
A flicker of warmth.
Hope can live in a vacuum.
(Greg Rucka, "Star Wars : Guardians of the Whills", p148)

 

以下はくだものさんの訳。


「なぜなら信仰は希望につながり、希望は怪物を倒すことができるものだからだ。だがやつら(帝国軍。きり注)は、希望を押しつぶすには十分な時間いるが、希望がとても小さなものでいいことを理解していない。希望は生き残るのにそれほど多くのものを必要とはしない。時折風がそよぎほんの少しの温かさがあれば。それだけで希望は生きていける。」

 

このベイズってキャラクターはチアルートと真逆で、フォースは信じてないし怒りを原動力として動く冷笑家なんですが、そんな彼でも原初的な人の希望の力を信じているわけですね。

ちなみにこの後ソウに「まるでお前の友人(チアルート)みたいな物言いだな」って言われて、ベイズが「いない時にはな」ってデレる萌えポイントがあります

 

スターウォーズって、人外が超能力でドンパチやるイメージなんですけど、旧三部作のそもそもの発端って、別にジェダイでも何でもなくて、
「時は内乱の最中である。秘密基地を発った反乱軍の宇宙船団が、邪悪な銀河帝国軍に対して初の勝利を収めた。」
ってエピソード4の冒頭に書いてある通り、名もなき一般人の集合体である「ただの宇宙船団」(しかも多く見積もって最初は数十人のならず者)だったんですよね。

華麗な超能力バトルの陰には、こんな風に名もなき普通の人々の、弱々しく、でもそう簡単には消えない、しぶとく泥臭い希望があって、それが積み重なって時代を切り開いたんだってことが、ローグワンでは描かれています。

この功績は、「ともすれば壮大な親子喧嘩だったスターウォーズの世界を広げた」という風にも、一般的には表現されますね。

 

つまり、キリスト教世界とは違って救世主を失ってしまったスターウォーズの世界において、暗黒時代に風穴を開けたのは、アナキンの子供たちといった選ばれた存在ではなく、人々の希望の集合体だった!

もっと言うなら、フォースの導きを人々が正しく受け取り、誰一人欠かさずに実行した結果だった。

ローグワンに登場する反乱軍は、ラスト1分に至るまで、誰一人欠けても4以降の展開は生まれないという描写になっています。

クリスチャン的には、イエスが昇天して、世界の終末を待つ現代において、一人一人が正しく自分の中の聖霊を燃やすことがいかに大切かが、ひしひしと伝わってくるわけですよ。

熱い!熱すぎるぞローグワン!

 

勧善懲悪や、選ばれし者のミラクル展開が苦手な人は、正直今までのスターウォーズはキツいところがあったと思います。

まあ100%勧善懲悪かって言ったらそうでもないわけだけど…

 

ローグワンは、そういうスターウォーズアレルギーみたいな発作を起こした人にこそ見てほしいです。

スピンオフだからこそできる、いい意味でスターウォーズの枠から外れた一作です。

 

メインテーマも流れず、ジェダイもおらず、ライトセイバーもなく、人によっては「こんなのスターウォーズじゃない」って言うファンもいるかもしれません。

でも私としては、スターウォーズの戦争叙事詩としての側面、そしてクリスチャン的に共鳴する部分にガッツリ切り込んだ、最高なスターウォーズです。

 

…。

 

…………。

 


…そして腐女子的には、スターウォーズ初のカップル解釈が公認の名コンビ:ベイチアを生み出した最高に滾るジャンルです。

 

ごめん綺麗にまとまりそうだったのに、最後の最後に我慢できず欲望が発露してしまった。


まあでもそんな感じでローグワン素晴らしいので(説得力…)、

スターウォーズが好きな人も嫌いだった人も、

クリスチャンもそうでなくても、

腐女子も一般の方々も、

みんなローグワン観ようぜ!